アレルギーとは、「変わった反応」という意味で、免疫学的な過敏反応を中心といした現象のことをいい、アレルギーを起こす物質を「アレルゲン」といいます。このアレルゲンというのはあらゆるところに存在し、自分の身体をつくっている物質以外のものは、全てアレルゲンになると考えてもよいほどです。(表1参照)。このアレルゲンの中にダニ(生体・死骸・糞)は入っています。アトピー性皮膚炎・喘息・じんましん・鼻炎などはこのアレルギー症状のひとつです。
西宮市衛環境生局等の調べによれば、小児喘息の原因は体質、成人喘息の原因はハウスダストにあるとされています。
表1アレルゲンの種類(一部)
吸入アレルゲン
|
ハウスダスト(ダニ)・花粉・真菌・動物・絹・綿・畳・ソバガラ 等
|
食物アレルゲン
|
卵・牛乳・魚介類・牛肉・豚肉・そば粉・小麦粉・大豆・米・ピーナッツ 等
|
接触アレルゲン
|
化粧品・外用薬・金属(ニッケル・コバルト・クロム) 等
|
薬物アレルゲン
|
各種抗生物質(ペニシリンなど)・アスピリン・抗血清 等
|
昆虫アレルゲン
|
ハチ毒・蚊・ゴキブリ・ユスリカ・蝶・蛾 等
|
注)アレルゲンにある物質は人によって異なります。
ダニは《節足動物部門−蜘蛛網−ダニ目》に属します。ちなみにくもは《節足動物部門−蜘蛛網−クモ目》ですから、ダニはクモに近い生き物であることがわかります。
居住内で見られるダニは、主に次の4種類ですが、すべてのダニが人を刺したり、アレルギーの原因になったりするわけではありません。
@チリダニ類
別名ヒョウヒダニ類。一般的にダニの70%〜90%は、このチリダニ科に属します。なかでも多いのがヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニの2種類です。大きさは0.2o〜0.5oで、生きていると膨らました楕円形をしており、体表にしわのあるのが特徴です。アレルギーの原因(アレルゲン)といわれているダニは、このヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニです。
Aコナダニ類
主に食品に発生するダニです。甘い物(キャラメルやビスケット、黒砂糖など)につくサトウダニや、きな粉や味噌につくアシブトコナダニなどの他に、ケナガコネダニが有名です。ケナガコナダニの発育できる湿度は10〜35℃で、特に20〜25℃が適温です。これに90%の程度の湿度が好適です。餌としてアオカビやコウジカビなど高湿度のカビを食べます。好条件に恵まれると雌は1日10個前後の産卵能力があり、急速に個体数が増加して短期間のうちに食品はダニだらけになります。
Bツメダニ類
@のチリダニ類、Aのコナダニ類や小昆虫などを餌としているダニです。ムシャムシャ食べるのではなく体液を吸います。従ってダニの死骸は残ることになります。クワガタツメダニや畳床にする稲藁とともに輸入されたと考えられているミナミツメダニなどが有名です。人を刺すのではないかと、という説もあります。
Cイエダニ類
家ネズミに寄生するダニで、人からも吸血することがあります。吸血のチャンスがないと長時間発育を停止させて、飢餓に耐えています。50年程昔の日本の家屋には、たいてい家ネズミがおり、このダニの被害を受ける人が多かったためにイエダニの名前がついています。被害は女性・子供に多く、胸部・下腹部・大腿部など皮膚の柔らかい部分のことが多いようです。
アレルギー学会の報告によると、喘息のおよそ80%はハウスダスト中のダニが原因であるということです。
数年前、NHKがダニ問題の原因としてカーペットを真っ先に取り上げたとき、まるでブームのように多くの人が木質床材に切り替える傾向がみられました。また、現在でも多くの医師は喘息患者に対して「カーペットを木床に替えるように」と指導しているようです。
しかし、西宮市と大阪府立公衆衛生研究所は共同で行った調査結果にもあるように、喘息などの原因となるダニは床よりもむしろ寝具に多く、カーペットを木材にしたからといってアレルギー対策が完了したわけではありません。掃除を怠る家庭では床を何に替えてもダニ問題は解決しません。
また、空中浮遊のダニが天井に着いたものと考えた場合、床面(カーペット・畳・木)と天井のダニ数を比較すると、あまり関連が見られないことがわかっています。
カーペット素朴な疑問 Q&A
Qカーペットのダニが小児喘息を起こすといわれていますが、本当でしょうか?
A.NO!
アレルギー性小児喘息やアレルギー性鼻炎等は、空中に浮遊しているアレルゲンとしてのダニや花粉等を吸い込むことで発症することが知られています。しかし、カーペット床からは空中浮遊ダニアレルゲンはほどんど見出せず(大阪府立公衆衛生研究所)、むしろ平成2年3月2日報告の、西宮市環境衛生局の喘息有症率調査(調査人数:40,164人)では、カーペット床は他の床材に比べ有症率が低くなっています。また、同調査報告ではアトピー性皮膚炎、鼻炎、結膜炎の有症率も同様の傾向を示しています。 |
Qそれでは、カーペットのダニはまったく気にしなくてもよいのでしょうか?
A.NO!
カーペットのダニとアレルギー性小児喘息やアレルギー性鼻炎等との因果関係は極めて希薄です。しかしながら、他への汚染が考えられますので、異常な繁殖を防止するためには配慮が必要です。ダニアレルギー疾患を発症させないためのダニ除去基準として、WHO(世界保健機構)では、「ほこり1g当たりチリダニ抗源の量を1μg以下」と設定しています。これは、ほこり1g中のダニ数が100匹以下に対応するといわれており、西宮市環境衛生局の調査結果からも、環境改善の目安として100匹/u以下と結論づけています。
|
Qカーペットのダニの異常な繁殖を防止するためには、どのような方法があるのですか?
A.@掃除と換気をこまめに行うことがダニを繁殖させないためには重要です。
室内温度はできるだけ20℃以下にならないようにし、室内湿度を相対湿度50%以下に保つようにすることが大切です。さらにはダニの餌を少なくするためにも掃除を頻繁にすることが大切です。
|
A《防ダニ加工カーペット》を使用することが、大変効果的です。
カーペットのパイルや基布、ラッテクスに、ダニ忌避効果や増殖抑制効果のある薬剤を付与し、ダニの繁殖を抑制・防止している《防ダニ加工カーペット》を使用することも大変効果的です。
|
●2種類の防ダニ性能の効果
(1)忌避効果
カーペットにダニを寄せ付けない効果です。ダニの場合、その死骸や糞もアレルゲンになるとされており、最初から寄せ付けないことが重要です。 |
(2)増殖抑制効果
ダニを素早くすぐに殺してしまう効果ではなく、数日〜数週間の後、徐々にダニ数が減っていく効果です。産卵孵化による子孫の増殖を阻止する効果もあります。
●防ダニ性能を表すマーク
|
安全性・持久性を考慮した防ダニ加工を施しています。日常のメンテナンスにも充分にご留意下さい |
|
防ダニ加工製品協議会認定。高い増殖抑制効果があり、安全性、耐久性にも優れています。 |
|
繊維加工用の防ダニ薬剤は公表されていない部分が多く詳細は不明ですが、カーペットは直接肌に触 れることが多いため、どの薬剤も安全性には充分配慮されています。
ピレステロイド系・カルボン酸エステル系・芳香族化合物などが主成分として使用されています。
一般的に、防ダニ加工と抗菌・防臭加工とは区別されており、防ダニ加工はダニに対しての忌避効果や増殖抑制効果があり、これに比べて抗菌・防臭加工は微生物の増殖を抑制し、その結果として微生物から発生する特有の匂いを防ぐ効果があります。
すくなくとも3日に1回は、1m2当たり20秒程度の掃除機をかけることが必要
《防ダニ加工カーペット》のPRをする場合には、パンフレットやカタログ等の製品説明文章の中に必ず「メンテナンス(掃除)が大切」という主旨の文言を挿入することが、日本カーペット協会によって義務づけられています。こめまに掃除と換気を行うことがダニを増殖させないためには重要です。
監修 (社)日本インテリアファブリックス協会・日本カーペット協会・日本特殊毛織物等工業組合・日本科学繊維協会
|